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日本の森を守る 見山謙一郎のコラム

第36回 環境問題に対する「意識」と「行動」の乖離~求められる当事者意識

この4月から新たに専修大学経営学部で教鞭をとることになりました。担当する科目のひとつに「経営組織論」があります。「経営組織論」と聞くと、企業組織をイメージされる方も多いと思います。しかし、私は、企業という組織、そして社会という更に大きな組織を、「学生を起点とした視点」で考えてもらうことを目的とした講義設計をしています。その為、講義では毎回、環境問題や途上国の貧困問題など、現代社会の様々な社会課題を取り上げ、その課題に対して、「経営学、ビジネスの手法を用いた持続可能なアプローチでどのように向き合うことが出来るのか」を学生同士でディスカッションしてもらいます。それは、社会課題に対して関心を持ってもらうとともに、評論家や傍観者ではなく、「当事者意識」を持ってもらいたいと考えているからです。

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以前、本コラムで環境問題に対する意識について、欧米と日本との違いを書きました。欧米では、自然を人間が克服する対象と捉え、人間を自然の外側に位置付ける一方で、日本人は日常生活の中で四季の移ろいや自然の恩恵を深く感じ、人間を自然の中に置くことから、日本人の自然や環境に対する意識は高い、という話でした。この自然環境に対する意識は、今も変わらぬ日本人の特徴であると思います。一方で、世界の環境問題のリード役に日本がなれているかと言えば、必ずしもそうなり切れていない現状があると思います。感覚や頭の中では理解しているものの、具体的な行動になかなか繋がらない、というのが日本の環境問題に対する取り組みの特徴です。

旭硝子財団が行っている「地球環境問題と人類の存続に関するアンケート調査」というものがあります。この調査は、リオデジャネイロで地球サミットが開かれた1992年以来、環境問題に造詣の深い世界中の有識者を対象に行われているもので、2017年9月に26回目の調査結果が発表されました。この調査では人類存続の危機に対する認識を「環境危機時計(R)」という時計の針に例えて0:01~12:00の範囲で測るものです。2017年9月の環境危機時計(R)は、“極めて不安(9:01~12:00)”と考えられる水準の9:33でした。

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環境危機時計(R)では、経済発展を遂げた先進国は、今後の環境問題に対する危機意識が世界平均よりも強くなる一方で、これから経済成長を目指す途上国は危機感が世界平均よりも弱くなりがち、との傾向が見られます。実際、西欧の環境危機時計(R)は9:45と、世界平均(9:33)よりも危機感が強く、アメリカもトランプ大統領がパリ協定からの離脱を表明した影響もあり、10:08と西欧の危機感をも上回るものでした。一方、これから経済発展を目指すアフリカは9:12と、環境危機時計(R)で測った危機感は、世界平均を下回るものでした。これに対して、先進国である日本の環境危機時計(R)は9:11と、世界平均やアフリカよりも危機感が弱い、という結果でした。

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日本の特徴は、豊かな自然の恩恵から、環境問題に対する漠然とした意識は強いものの、具体的な事象に対する危機感は弱く、それ故、具体的なアクションに、なかなか繋がらないということだと思います。無駄に危機感を煽ることは如何なものかと思いますが、世界の実情をしっかり把握した上で、世界の一員、「当事者」として危機感を抱くことはとても重要なことだと思います。「漠然とした意識は行動には繋がりづらく、危機感が行動を促す」というのは、何とも皮肉なことではありますが、ある意味、それが人間の本能であり、本質なのかも知れません。思えば、本会のスタートは故郷の森林の荒廃を地方銀行の役員が目の当たりにしたことがきっかけでした。このままではいけない、何かを変えなければいけない、という「当事者意識」による危機感が“日本の森を守る地方銀行有志の会”の設立という行動に繋がりました。第33回のコラムで紹介したSDGs(持続可能な開発目標)も全ての国の参加が前提となっており、先進国、途上国を問わず、「当事者」としての行動が求められています。その意味でも、全国の地方銀行が参加する本会の活動は、SDGsを先取りした活動だったのだと、今、あらためて思います。

また、今回紹介した旭硝子財団の調査では、若者の環境問題に対する危機感は2011年と比べ、格段に強くなっています。本会の活動に学生や若手行員を巻き込み、当事者として具体的な行動をともに考えていく、そんな取り組みがあってもいいかも知れません。本会発足の原点に立ち返り、現代社会の課題に対する地方銀行の取り組みを、本会のアドバイザーをつとめる私自身も「当事者」として、しっかりサポートして行きたいと思います。

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以 上

参考資料:公益財団法人 旭硝子財団 地球環境アンケート

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