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日本の森を守る 見山謙一郎のコラム

第27回 高齢化社会とポジティブに向き合う~「三世代交流」を考える

最近、私が委員をつとめる行政委員会等の場で、高齢化社会に向けた「課題」が議論される機会が増えているような気がします。環境省の中央環境審議会の循環型社会部会では、地方の高齢者が日常生活の中で、ゴミ出しにも苦労をしているという話が議論されました。また、使用済みの紙おむつの燃料化を他の自治体に先駆けてスタートさせた、鳥取県伯耆町の森安保町長は、「今後、使用済み紙おむつに代表されるように、“高齢化社会とゴミ問題”というテーマは、避けて通ることは出来ない」というお話をされていました。このように、高齢化社会は、一般的にネガティブな要素と受け止められ、特に高齢化が進む地方において大きな社会課題と考えられています。

高齢化社会のポジティブな側面とは?

そんな中、「北の国から」の脚本家として知られる倉本聰さんが主宰し、SMBCが特別協賛しているNPO法人富良野自然塾の林原博光副塾長とお話をさせていただく機会がありました。倉本さんも林原さんも、高齢化社会とはネガティブな側面ばかりではなく、ポジティブな側面もあると考えており、そこに光を当てようとしています。林原さんは、「高齢化社会が進むことは、祖父母、父母、孫の三世代の交流が可能になるので、知識や知恵を伝承するためには、とても恵まれた社会環境である」、というお話をされていました。富良野自然塾では、女優の竹下景子さんが、インストラクターとなり、三世代が森の中で地球環境や自然のことを考えながら2日間を過ごす「3世代ファミリーキャンプ」というプログラムが10年間続いており、今年も夏に開催される予定です。このキャンプでは、普段の生活では自然に触れる機会がない子どもたちに対し、祖父母が様々な知恵や知識を伝承することで孫との会話が生まれ、自然との向き合い方を知る祖父母が孫から尊敬されるきっかけが生まれています。また、「人の手でつくられた都市の情景は、時代とともに刻々と変化していくが、自然環境の中での遊びや学び、そしてその美しさは、三世代で共有することができ、更に次の世代という未来を意識するきっかけにもなる」というお話が、とても印象的でした。

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3世代ファミリーキャンプでの植樹(左端は、インストラクターの竹下景子さん)

三世代の会話や交流を生む仕組み作り

三世代交流の仕組み作りは、沖縄で大人気の特撮ご当地ヒーロー番組「琉神マブヤー」にもヒントがあると思います。沖縄では知らない人がいないと言われる、このヒーロー番組は、沖縄の文化の復活・継承に徹底的に拘っているのが特徴です。中でもユニークなのは、セリフを沖縄の方言(ウチナーグチ)にし、敢えてそれを解説なしで放送するという試みです。この狙いを「琉神マブヤー」のエグゼクティブ・プロデューサーである畠中敏成さんは、「沖縄の方言を聞いても、子どもは全く理解出来ず、お父さんに聞くことになります。しかし、当のお父さんも方言が分からない世代が増えているので、お爺ちゃん、お婆ちゃんに助けを求めることになります。そうすると、テレビの前にお爺ちゃん、お婆ちゃんと孫が座り、会話が生まれ、それを見た両親も一緒にテレビを見るようになり、マブヤーを通じた三世代交流を起こすことが出来るのです。」と説明してくれました。

今、私は、畠中さんや、ご当地ヒーローの先駆けとなった秋田県の「超神ネイガー」を手掛けた海老名保さん、そして本会の第22回情報交換会でも講演されたチェッカーズのプロデューサーなどをつとめた吉田就彦さんらと一緒に、ASEAN各国でマブヤーやネイガーのような現地の文化や風土、歴史や伝統に根ざしたご当地ヒーローを、現地の人たちと一緒に生み、育てていく「ワールド・ミライガープロジェクト」の取り組みを進めています。最初の展開地に選んだタイでは、「ミライガーT1」というヒーローを生み出し、既にテレビ番組の放送やショッピングモール、小学校などでショーを手掛けています。実際にタイに行って驚いたことは、タイでも高齢化が進んでおり、65歳以上の高齢化率は、現在の8.9%から、2024年には14%以上となると推計され、このスピードは日本を凌ぐものであるということでした。高齢化が進むタイで、これから社会課題になると考えられているのは高齢者の介護問題です。現在は基本的に家族によって行われていますが、所帯状況の変化に伴う家族介護力の低下や今後の要介護高齢者の更なる増加により、日本のように家族の介護疲れが社会問題化することも懸念されています。こうした社会では、「三世代交流」が大きな鍵を握ることになると思います。その意味でも、「琉神マブヤー」の三世代交流の仕組み作りは、タイのような新興国でも生かすことが出来ると考えています。

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ミライガーT1(中央左)と琉神マブヤー(中央右)

三世代交流の先にあるもの

よくよく考えてみれば、今放送されているNHKの朝の連続テレビ小説「ひよっこ」や、長寿番組となっている「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」など、三世代交流を描いたドラマやアニメは、少なくありません。こうした三世代が日常で交流する物語を見て、私たちは育ってきました。高齢化社会をポジティブに捉え、三世代交流、特に祖父母と孫との交流や会話の機会が増えれば、孫の世代が地域の歴史や風土、自然環境などに興味を抱くようになります。そして、三世代が一緒に活動することで、孫の世代にも当事者意識が芽生え、未来を意識することへと繋がって行くのだと思います。

以 上

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