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日本の森を守る 見山謙一郎のコラム

第29回 「地方銀行のメディア機能から、地域の未来を考える」

先日、ジャーナリストの神保哲生さんをお招きし、大学生に対するメディアリテラシーの講義を行いました。そもそも、メディア(media)とは、ミディアム(medium)の複数形のことで、ステーキの焼き加減を示す、あのミディアムのことです。レアとウェルダンの間、中間、媒介、媒体という意味を持ちます。ジャーナリズム世界では、メデイアは希少性の高いデリバリーパス(伝送路)を持つことから、情報等のコンテンツを情報の受け手へと繋ぐ役割を担います。かつて伝送路には希少性があったのですが、日本においても1990年代後半から本格化したインターネットという新たな伝送路の出現により、誰もが情報の発信者になれる時代が到来し、それにより情報の受け手の選択肢も多様化しました。神保さんのお話をお聞きし、私が勤めていた銀行という業種も、お金と信用情報を媒介する「メディア」ではなかったのか、ということに気づかされました。

新しい技術とどう向き合うのか?

放送局に代表されるマスメディアも、地方銀行を含めた銀行も免許制の規制産業という共通点があります。一般的には、こうした規制産業からは、なかなか新しい取り組みや挑戦が生まれず、イノベーションが生まれにくいとされている点も、共通する部分があります。そんな中、マスメディアの世界では、インターネットによる伝送路の開放という破壊的技術による多様化が、また金融の世界でもAIなどを活用したFinTechの新興勢力が徐々に勢力を拡大しつつあります。新しい技術に翻弄されるのか、それとも技術をうまく取り入れながら、未来に向けた戦略を描くのか、その端境期にマスメディアも銀行も立たされているのだと思います。

地方銀行が、新しい技術に翻弄されない為には、地域金融機関として本分や原点に立ち返り【過去】、今の地域経済の状況や地方銀行に求められている役割を理解し【現在】、未来への戦略を描くこと【未来】が必要です。地方銀行をメディア(媒介者)と置き換えて考えてみると、そのヒントが見つかるような気がします。

メディア機能における地方銀行の可能性

FinTechというツールの議論に、とかく振り回されがちですが、地方銀行固有のコンテンツとは、森林に代表される自然環境や、地域の歴史や風土、文化から生まれた産業や農業、林業のことなどです。そして、地方銀行が有する金融機能や情報の媒介機能というデリバリーパス(伝送路)が活用されることで、こうした固有のコンテンツから、地域内における資金や情報の循環を生み出すことが可能となります。更には、東京、大阪、福岡等の国内大都市や、一足飛びに世界という新しい市場に対して、地域の魅力や価値、情報を発信することで、新しい繋がりや関係性が生まれ、地域の未来像を描くことが出来るはずです。

仕事柄、地方企業の社長とお目にかかる機会が増えていますが、「地方から直接世界を目指したい」というご相談が多いことに驚かされます。成功事例を生み出すためには、それなりに時間も必要となりますが、だからこそ、メガバンクでは難しい「長期的な関係性を前提に、お客様と向き合う」という地方銀行の特色を生かし、地域に眠るコンテンツを掘り起こし、育て、海外を含めた情報の受け手へと繋いでいくことにより、未来に向けた地域のオリジナル・ストーリーを描くことが出来るのだと思います。

地方銀行のメディア機能

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以 上

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