トップページ >> 日本の森を守る 見山謙一郎のコラム >> 第6回 Profitを意識したCSR活動~3Psという価値観

日本の森を守る 見山謙一郎のコラム

第6回 Profitを意識したCSR活動~3Psという価値観

前回はCSRについて「言葉」という観点から述べましたが、今回は少し踏み込んで「価値観」という観点から述べてみたいと思います。CSRという「価値観」が欧米から日本に入って来た1990年代後半、これはあくまでも当時バンカーであった私の現場感覚ですが、日本企業が「環境報告書」を発行し始めた時代背景もあり、各企業は「環境」を起点にCSRに対する取り組みを始めていきました。折しも1997年12月に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3・京都会議)で温室効果ガスの削減目標が定められたこともあり「環境問題」≒「地球温暖化」という価値観、雰囲気が日本企業に定着し、以後こうした傾向は企業の植林活動などの形で今日まで続いています。

CSRに対する評価指標としては、1997年にイギリスのサステナビリテイ社のジョン・エルキントン氏が提唱した「トリプルボトムライン」があります。これは、企業を財務的側面(経済的指標)からだけではなく、①Economic(経済的側面)、②Social(社会的側面)、③Environment(環境的側面)という3つの側面から総合的に評価しようとするものです。一般的に日本企業でCSRと言った場合①Economic<②Social、①Economic<③Environmentと捉えられがちであることが気になりますが、「トリプルボトムライン」で求めているのは、あくまでも企業の経済活動を通じて、社会的課題や環境問題に対する取り組みを行うということです。

金融機関のCSR活動は製造業などと比べて、確かに難しい面があるとは思いますが、オランダにはこうした取り組みを既に実践している銀行があります。それは1980年に設立されたトリオドス銀行(https://www.triodos.com/en/about-triodos-bank/)という銀行で、環境問題を起点に社会的課題に対する取り組みや文化的な活動に特化した融資活動を行なっています。私は今年の2月に調査目的(*)でこの銀行を訪問したのですが、彼らが考えるトリプルボトムラインは大変興味深いものでした。それは①Profit(利益)、②People(人)、③Planet(地球)という「3Ps」と言われるもので、基本的にはエルキントン氏が提唱するトリプルボトムラインと同じ価値観なのですが、最大の特徴はProfitというストレートな価値観をCSR活動に持ち込んだことにあります。実は3Psは12万人を雇用し、寄付だけに頼らず自主財源による活動に取り組んでいる世界最大のNGOであるBRAC(バングラデシュ)(http://www.brac.net/)でも取り入れられている価値観で、本業とCSR活動は不可分と考えることに特徴があります。エルキントン氏が提唱するトリプルボトムラインが「CSR評価者の為の指標」とすると、3Psは「CSR実践者の為の指標」と言えるでしょう。こうした観点から、本会も実践者の立場から3Psの価値観をより意識すべきと思います。

CSR評価者の為の指標「トリプルボトムライン」

2009年にトリオドス銀行のような現代社会の様々な課題に積極的に向き合い、次世代を意識した継続性のある取り組みを実践する銀行が集まり、Global Alliance for Banking on Values(GABV)(http://www.gabv.org/)が設立されました。会員数はスタート時の9行から、現在は世界中から25の銀行が参加しています。ちなみにバングラデシュではNGOのBRACがマイクロファイナンスから自立した起業家(中小企業)を支援する為に設立したBRAC銀行(http://www.bracbank.com/)が参加しています。

GABVの理念は、

  • トリプルボトムライン(3Ps)のアプローチをビジネスモデルの中心に据えること
  • 地域社会を土台に、実体経済に寄与する新たなビジネスモデルを可能にすること
  • 顧客との長期的なリレーションシップと、顧客のリスクを内包した活動を理解すること
  • 長期的視点で自立的な取り組みを実践し、外部環境を克服する力を持つこと
  • 透明且つオープンな銀行経営を行うこと
  • これらの行動原則を銀行文化に埋め込むこと

の6つとなっていますが、これらの理念からも本会の活動のヒントが得られるのではないでしょうか?

今日現在、GABVに参加している日本の銀行はまだありません。本会の活動をトリオドス銀行のコーポレートマネージャーに説明したところ、彼女は本会から将来的にGABVに参加する銀行が出てくることを強く期待していました。もしその時が来たら、私も微力ながらそのお役に立てればと考えています。
以 上

(*)「バングラデシュのソーシャルビジネス研究による、地域の自立的発展と金融の役割の考察」(平成23年度・日本学術振興会: 基盤研究(C))

バックナンバー

ページトップへ