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日本の森を守る 見山謙一郎のコラム

第31回 「目利き力」、「コンサル能力」とは?

地方創生の取り組みに対して、地域金融機関に対しては「目利き力」や「コンサル能力」が期待されています。私が銀行に勤務していたのは、もう10年以上も前のことですが、当時は「目利き力」も「コンサル能力」という言葉もなく、「案件発掘能力」と言われていたような気がします。

私が銀行に入行したのはバブル経済真っ只中の1990年でしたが、融資の基本は研修で徹底的に叩き込まれました。とかく担保主義と言われる銀行の融資ですが、研修で学んだことは、「ヒト」、「モノ」、「カネ」、「情報」で表現される、融資の心得でした。このことは、今の私にとっても、重要な指針となっています。

融資の心得~「ヒト」、「モノ」、「カネ」、「情報」

「ヒト」とは、経営者の人物、人となりをしっかり見るように、ということで、外部情報からだけでは判断することが出来ず、Face to Faceの対話がベースとなります。創業社長であれば、なぜ、この企業を立ち上げたのかや、企業理念などを深く理解する必要があります。

「モノ」とは、企業の取り扱う製品やサービスのことであり、市場環境や競合情報等、経営戦略的な視点が求められます。私は多くの中小企業の社長から直接お話を伺い、工場見学や実際に製品を見せていただくことで、現場の生きた情報を学ぶことが出来ました。「モノ」の理解の為には、どれだけ多くの現場情報を集めることが出来るかが重要であったと、今になって思います。

「カネ」とは、企業の財務情報や、資金計画など、客観的な定量情報です。数字は正直である反面、数字に表れない情報もあります。過度な数字依存は融資の判断を惑わすことになることも、現場での体験、特に不良債権処理を担当した時に学びました。

「情報」とは、今で言えば、ネットワークと言えると思います。中小企業は大企業と比べ情報ソースが限られていることから情報量が少なく、それをサポートすることが、バンカーの役割として期待されていました。私も、新しい販路開拓情報を提供し、今で言うビジネスマッチングを行うことで、新規融資取引先の獲得に繋げてきました。これがある意味、「コンサル機能」のひとつと言えるかも知れません。

一次情報に触れる

大学卒業後、最初に配属されたのは、郊外の支店でしたが、担当地盤を回っていて痛感したことは、地域金融機関が圧倒的なシェアを持っていることでした。郊外に支店網の少ない都市銀行(当時)が、支店網が張り巡らされた地域金融機関の牙城を崩すことは、本当に大変でした。当時はインターネットもメールもない時代でしたので、電話か対面のみがコミュニケーションツールでした。ダメもとの飛び込み営業により、社長と面談して得た、直接対話による一次情報が、「案件発掘力」、今で言う「目利き力」や「コンサル能力」の醸成に繋がったと思います。様々な情報が溢れる現代社会においても、「目利き力」や「コンサル能力」は、現場で一次情報に触れながら、試行錯誤しながら学んでいくものだと、自分自身の経験から強く感じています。

現場の声に耳を傾ける

「林業ビジネスや環境ビジネスは、特殊なもの」と感じられている方が、まだまだ多いと思います。林業ビジネスと言えば、バイオマス発電や間伐材の利活用、環境ビジネスと言えば、温室効果ガスの削減など、ステレオタイプに捉えられがちなことが、こうした印象を持つ原因になっています。また、これらのビジネスは儲からない印象が強い為、補助金の活用や、金利の減免等、限定的な金融支援に留まりがちとの印象を受けます。しかし、実際に森林の中に入っていくと、前回のコラムで紹介した自伐型林業など、既存の林業の仕組み自体を変えて行こうとする取り組みや、クリエイティビティを生かした商品開発を進めるクリエーターなど、とにかくベンチャースピリッツに溢れた面白い面々がたくさんいます。こうした独創的な思考を持つ開拓者たちと、直接対話をすることで、ビジネスに繋がる大きなヒントが必ず見つかるはずです。「目利き力」も「コンサル能力」も、実は金融機関が一方的に提供するものではなく、クライアントとの相互対話から生まれる共同作業なのです。是非、森林に足を踏み入れ、現場の声に耳を傾けてみてください。必ず、新たな発見があるはずです。

以 上

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