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日本の森を守る 見山謙一郎のコラム

第32回 金融機関におけるオープン・イノベーション
~「森林の未来を構想するオープン・プラットフォーム」についての一考

金融機関とオープン・イノベーション

編集委員を務める公益社団法人日本マーケティング協会の機関誌「マーケティングホライズン」の11月号でオープン・イノベーションが特集され、地方自治体が主導するオープン・イノベーションの事例として、佐賀県佐賀市の「さが藻類バイオマス協議会」の事例を紹介させていただきました。オープン・イノベーションについては、2017年10月に公表された金融庁の「金融レポート」の中でも重点施策の一つとして、「FinTech(フィンテック)への対応」の中で言及されており、今や金融機関にとっても避けては通れないテーマとなっています。インターネットの普及で様々な情報へのアクセスが容易になったことにより、情報の非対称性が失われていく一方で、顧客からは、より高度で専門的な知識や情報の提供が金融機関に求められるようになっています。これからの時代、銀行内部のリソースだけでは対応できない事案は、益々増えていくものと思います。

金融機関にとってのR&D

製造業においては、未来の価値創造の為にR&D(研究と開発)が行われます。R&Dは、「基礎研究」から、「技術開発」、そして「製品開発」という流れで進んでいきますが、今や製造業においても「基礎研究」の段階から自社単独ではなく、オープン・イノベーションによる外部との連携が模索される時代です。金融機関における未来の価値創造について考えた時、IoTやAI等の技術革新が進む中、もはや自社単独での対応は不可能で、外部との連携、オープン・イノベーションが不可欠となっています。金融機関のケースを製造業のケースに置き換えて考えてみると、現在のFinTechにおけるオープン・イノベーションの取り組みは、R&Dの「技術開発」に相当すると思います。しかし、FinTechベンチャーなどが開発した新しい技術は、それだけでは自行のサービスには落とし込めず、自行独自の様々な工夫や、顧客を新しいサービスに誘導する為の仕組みづくり(≒「製品開発」)が求められます。では、金融機関にとって未来の価値創造の為の「基礎研究」つまり、「未来の種づくり」とは、何にあたるのでしょうか?

未来の種づくり

金融機関にとっての「基礎研究」とは、社会状況の変化に伴い、常に変わっていく顧客ニーズを追い求め、その把握に努めることだと思います。地域金融機関にとっての「顧客」とは、大きく捉えれば「地域」そのもののことであり、「顧客への価値の創造」とは即ち「地域の活性化」へと繋がります。つまり、地域金融機関にとっての「未来価値の創造」とは、「地域活性化により、地域の未来を創造すること」に他なりません。本会の活動の趣旨は「それぞれの地域の森林を守ること」ですが、このことはあくまでも手段であり、真の目的は、森林固有の有形・無形の資源活用により、「地域の未来を創造すること」なのだと思います。

森林の未来を構想するオープン・プラットフォーム

このように考えていくと、地方銀行の有志64行が集う本会で、「森林」をテーマにしたオープン・イノベーションの仕組みづくりを考えていくことも、本会の活動趣旨と合致すると思います。例えば、森林をテーマにビジネスプランコンテストを開催し、森林ベンチャー企業を発掘し、サポートして行くのもいいと思います。また、森林関係の困りごとを林業関係者から集め、それをもとに参加行の行員同士が新たな金融商品をワークショップの中で検討していくのも面白いかも知れません。こうした活動は、2015年に国連で採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」の達成に向け2017年11月に改定された経団連の「企業行動憲章」にも通じる話であり、金融機関としても取り組む意義と価値のあるテーマだと思います。


閉塞感漂う時代の中、未来に向けたオープンな議論の中から、本業へのヒントや地域に還元できる情報は必ず集まってくるはずです。日本の森を守る地方銀行有志の会が、そんな「森林の未来を構想するオープン・プラットフォーム」になれれば、地方から新しい風を起こすことができると思います。

以 上

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