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日本の森を守る 見山謙一郎のコラム

第40回 日本の森を守る地方銀行有志の会×SDGs(4)
~SDGsから地方銀行の未来を考える

これまで3回に渡りSDGsと本会、そして地方銀行との関係性について述べてきました。前回は、SDGsとCSRをメセナ的な慈善活動や社会貢献として、「本業」と切り離して解釈してしまいがちな日本企業の特徴について述べました。今回も地方銀行の「本業」という視点から、SDGsについて述べていこうと思います。

ESGの視点と地方銀行との親和性

CSRの評価手法については、第6回のコラムでも紹介したように、1997年に英国サステナビリテイ社のジョン・エルキントン氏が提唱した、企業を財務的側面(経済的指標)からだけではなく、①経済的側面(収益や損失等)、②社会的側面(人権配慮等)、③環境的側面(資源節約や汚染対策)の3つの側面から評価する「トリプルボトムライン」がよく知られています。この評価指標は、企業を“短期的”な視点(短期的な利益追求)ではなく、“長期的”な視点(持続性、成長性)から評価する新たな指標と位置付けられます。その後、この流れは2006年に国連のアナン事務総長(当時)が、機関投資家等に対し提唱した「責任投資原則(PRI: Principles for Responsible Investment)」が契機となり、「社会責任投資(SRI: Socially Responsible Investment)」へと繋がっていきます。責任投資原則の6項目は、環境(Environment)、社会(Social)、コーポレートガバナンス(Governance)の「ESG課題」が投資実務に及ぼす影響の拡大を受けて、国際的な機関投資家の集まりによって策定されました。


責任投資原則

1、私たちは、投資分析と意志決定のプロセスにESG課題を組み込みます。

2、私たちは、活動的な(株式)所有者になり、(株式の)所有方針と(株式の)所有慣習にESG課題を組入れます。

3、私たちは、投資対象の企業に対してESG課題についての適切な開示を求めます。

4、私たちは、資産運用業界において本原則が受け入れられ、実行に移されるように働きかけを行います。

5、私たちは、本原則を実行する際の効果を高めるために、協働します。

6、私たちは、本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告します。

こうした流れを辿っていくと、企業の評価指標としての「トリプルボトムライン」や、投資基準としての「ESG」などは、企業に対する客観的且つ長期的な評価指標という観点からも、銀行の本業領域との親和性が高いはずです。特に、長期的な視点で、地域の企業とのリレーションシップを構築している地方銀行においては、メガバンク以上に共感すべき点は多いのではないでしょうか。


ESGとSDGsの戦略的な取り組みの重要性(「価値協創ガイダンス」からの考察)

2017年5月、経済産業省は企業と投資家を繋ぐ「共通言語」として、相互に対話と情報開示を促す枠組みとして「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス(価値協創ガイダンス)」を策定しました。

このガイダンスは、企業にとっては、経営者が経営理念やビジネスモデル、戦略、ESG課題への取組等を統合的に投資家に伝えるための手引きとなり、投資家にとっては、中長期的な観点から企業を評価し、投資判断やスチュワードシップ(受託者責任)活動に役立てるための手引きとなります。あくまでも「手引き」であることから、企業と投資家を繋ぐ「共通言語」として、自主的・自発的な取り組みが促進されることを期待し、策定されたものです。このガイダンスの中で、ESGについては、「持続可能性・成長性」および「戦略」の項目で述べられており、企業がESG課題と向き合うことは、リスク対応のみならず、戦略的な取り組みにより新たな事業機会やビジネスモデルの強化にも繋がることが示されています。銀行は与信判断を行う企業の評価者であるとともに、自らも地域を代表する企業であることから、客観的な視点と主観的な視点の両方を生かした取り組みを本業領域で行えるはずですが、ひとつの組織体で主観、客観のふたつの視点を融合することは、なかなか難しいのかも知れません。

また、このガイダンスの中では、SDGsについても、グローバルな社会課題に取り組むことが、社会課題の解決と企業価値の向上に繋がるという「共有価値の創造(CSV: Creating Shared Value)」、という観点から述べられています。


価値協創ガイダンスの全体像

イメージ画像

経済産業省「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス」(2017年5月29日)より

SDGsから地方銀行の未来を考える

私自身の銀行員としての経験から言えることは、間接金融を行う銀行の与信判断は、過去の決算書や試算表が示す実績や与信保全のための担保が拠り所となっており、そのため、銀行は企業の未来を評価することを必ずしも得意とはしていないと思います。これまで述べてきたSDGsやCSR、ESGそしてCSVから導かれるものは、過去ではなく未来の姿です。今日、他業態からの銀行業への新規参入や、新興勢力によるFinTechなど、銀行業界を取り巻く環境は日々厳しさを増しています。地方銀行が、未来志向のビジネスモデルをどう構築するのか、そのヒントは、SDGsやCSR、ESGそしてCSVと向き合うことから得られるのではないでしょうか。特にSDGsは2030年まで(2016年~)の国際目標です。是非、2030年の地方銀行の未来像を、SDGsとも親和性の高い本会の活動を通じて考えていければと思います。

以 上

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